理事長 丸山 マサ美
2020(令和2)年、Celebrating Florence Nightingale’s bicentenaryの年、日本看護歴史学会は、34年目を迎えました。この度、12期理事会にて、理事長を拝命いたしました。私は、2007(平成19)年、「歴史の中に生きる看護の心(ethos)」をテ-マと掲げ、九州大学医学部百年講堂にて,第22回学術集会を開催させていただきました。以後10年間、理事を拝命し、一貫して本学会の発展に微力ながら尽力して参りました。11期理事会では、副理事長を仰せつかり、今期理事会では、いよいよ理事長となり、責任の重さを認識しております。この十年を振り返りますと、日本の看護の歴史を築いてこられた重鎮の尊い“語り”と共に、“歴史研究”を新たに学びたい方へ会員構成がシフトしています。その知的要望を満たすのが、本学術団体でございます。今、ここでの“尊い語り(narrative)”は、日本の看護歴史の軌跡と言っても過言ではなく、『貴重資料(publish)』として保存していく事は、本学会の重要な任務であると考えます。
この度、理事長を拝命し、その意味でも、これからの本学会の果たすべき役割を深く考える時期にあり、誠に僭越ながら、以下の2 点を学会運営における新たな取組みとして考えてみました。一番目は、本学会の学術交流 “narrative(語り)”の場に世代を重ね学ぶ事。また、二番目は、現在の本学会員の『扉』を歴史研究に興味・関心をもつ研究者にも開く事。私の専門は、バイオエシックス(Bioethics)です。バイオエシックスは,超学際的(Supra-interdisciplinary)なスタンスを持ち、ここ数十年で、広く日本の教育に受け入れられてきた歴史を持つ学問です。看護歴史研究・教育においても、そのような新たなスタンスを持つ“挑戦”が必要なのではないでしょうか。本学では、人文科学府、比較社会文化研究院,地球社会統合科学府等、資料研究に着手する新進気鋭の研究学徒が、日々研鑽を積んでいます。歴史研究専門家には、お叱りを受けるかもしれませんが、若手の新たな角度からの“看護歴史資料”の発掘や研究手法”の開発も、看護歴史研究の発展の為には、必要な“挑戦”です。多くの新会員が、本学会の『扉』を叩いてくださる事を期待しています。
ところで、会津若松に生まれた“大山捨松”は、日本の華族・教育者であり、愛国婦人会理事・赤十字看護会理事として看護師教育を発展させましたが、その兄である“山川健次郎”は、本学の初代総長です。現在、本学基金支援助成事業では、“山川賞”を設け、学生の純粋な探究心を応援しています。世代・時代・領域の垣根を超えた学術交流の中に、本学会の未来が広がるのではないだろうかと考える今日この頃でございます。
この度の理事長就任は、コロナ禍に始まりました。“安全性”を考慮した学術集会開催、学術団体運営は、最重要課題です。より良い学術団体の運営のあり方をご提案しつつ、本学会の発展の為に、鋭意努⼒する所存でございます。ご指導を賜りますようお願い申し上げます。